
去る2月20日、桜木町の横浜市健康福祉センターホールにて、「市民がつくる山下ふ頭の未来・提案発表の集い」が開催されました。市民団体や研究者などがそれぞれの視点から山下ふ頭の将来像を提案する場であり、筆者もこのイベントに参加し、「都心臨海部の未来を拓くために」と題して、LRT導入を含むまちづくりの提案を発表しました。下記にて、その内容の要点を紹介したいと思います。
横浜の都心臨海部は、港町としての歴史と豊かな景観を併せ持つ、日本でも稀有な都市空間です。しかし近年、各都市で臨海部再開発が進むなか、どこにでもあるような大型商業施設中心の開発に収斂してしまう危険性も指摘されています。現在大きな転換点にある山下ふ頭を、単なる開発用地として消費するのではなく、次世代へ受け継ぐ都市資産として位置付けることが重要です。そこで筆者は、山下ふ頭を中心に「海辺のグランドパーク」を形成し、市民の幸福度(Well-being)を高めるウォーカブルな都市空間を実現する構想を提案しました。
第一の提案は、山下公園、山下ふ頭、港の見える丘公園を一体的に捉えた「海辺のグランドパーク」の創出です。ふ頭単体の再開発ではなく、周辺の公園や歴史的景観を含めて再編することで、エリア全体を入場料無料の都市型テーマパークのような空間として整備します。その実現の鍵となるのが、一般マイカーの進入を制限するカーフリーゾーンの導入です。自動車交通を抑えることで、排気音や事故の不安から解放された、人間中心の快適な公共空間を生み出すことができます。歩くこと自体が楽しくなるウォーカブルな環境は、横浜ならではの都市ブランドを形成する重要な要素になると考えます。
第二の提案は、エリアの回遊性を高める交通システムとして、LRT(次世代型路面電車)とモビリティハブを導入することです。LRTを横浜駅方面や本牧方面から延伸し、山下ふ頭を交通結節点とすることで、臨海部の移動を大きく改善できます。大きな窓を持つLRTは、港の景観を楽しめる「動く観光資産」としての役割も果たします。さらに停留場周辺にはモビリティハブを整備し、水上交通や徒歩、自転車との乗り換えを容易にします。公開型の車両基地や交通展示スペースなどを併設すれば、市民が交通や都市について学び、憩う公共空間としての機能も期待できます。
第三の提案は、水上交通ネットワークの活性化です。横浜では近年、水上交通復活への取り組みが進んでいますが、これをLRTと連携させ、山下ふ頭を水上交通と陸上交通の結節点とすることで、みなとみらいから根岸へと広がる水上ネットワークを形成できます。港湾景観や運河など、横浜ならではの都市資源を改めて活かすことができ、地域の新たな魅力創出にもつながります。また交通利便性が高まれば、周辺の青空駐車場の多くは役割を終える可能性があります。そこをカフェや小規模店舗、公共空間へと転換することで、既存市街地の景観や都市体験の質も向上するでしょう。
第四の提案は、市民参加による「体験のデザイン」です。都市の魅力は施設だけで生まれるものではなく、そこに関わる人々の活動によって育まれます。行政と市民が協力し、完成を待つのではなく、周遊ツアーやポップアップマーケットなどを先行的に実施することで、まちへの期待と愛着を育てていくことが大切です。水上タクシーで運河を巡るツアーや、LRTの車窓から夜景を楽しむイベントなど、都市そのものを楽しむ体験を重ねることが、持続的な活性化の原動力になると考えます。
横浜は開港以来、新しい価値を自ら生み出してきた都市です。その精神を受け継ぐならば、山下ふ頭は短期的な利益を追う開発地ではなく、長期的な都市資産として考えるべきでしょう。LRTのチャイムが響き、潮風を感じながら市民が育てた公園を歩く日常は、決して遠い未来の夢ではありません。100年後の市民が「この景色を残してくれてありがとう」と思えるような都市づくりこそ、今を生きる私たちの責任だと考えています。
------






